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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星
難波屋を出てから、小紅はひとまず友達の家に身を寄せた。思案してみても、頼れる親戚などない。裁縫の稽古で同じお師匠さんに通っている弟子仲間がいる。中でもいっとう親しくしていたお紀代の家にしばらく厄介になることにしたのである。
お紀代は小紅よりは二つ上の十七歳、扇屋という名の知れた紅白粉問屋の娘だ。今年の夏には蝋燭問屋の跡取りに嫁ぐことが決まっている。丸顔のふっくらとした頬にまだ幼さの残る可愛らしい顔立ちで、気性も見た目と同様、穏やかである。
お紀代は小紅よりは二つ上の十七歳、扇屋という名の知れた紅白粉問屋の娘だ。今年の夏には蝋燭問屋の跡取りに嫁ぐことが決まっている。丸顔のふっくらとした頬にまだ幼さの残る可愛らしい顔立ちで、気性も見た目と同様、穏やかである。