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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星
労りに満ちた心からの言葉に、小紅は涙が出るほど嬉しかった。それからひと月、お紀代の家で厄介になりながら、その間に江戸の町を住み家や職探しに奔走した。
この裏店は江戸にはどこにでも見かける粗末な棟割り長屋だが、その中でも立地条件はあまり良くない方だ。陽当たりは悪いし、江戸の外れで中心部からは遠い。しかし、その分、店賃が信じられないほど安く、小紅は何軒かの似たような長屋を見て回って、即決した。