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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日
―家内から聞いているが、お針子としての腕もかなりのものだという。人柄もこれは申し分ないと扇屋さんの方も太鼓判を押して下さっている。どうだね、うちの上の倅が今年、二十一になる。徳太郎といってまだまだ若いが、今年になって、この倅に身代を譲ってね、まだ私が元気な中に後見をしながら当主としての経験をさせたいと考えているんだ。若くとも京屋の主となったからには一日も早く嫁取りを気は急いているのだが、なかなか良い娘さんが見つからない。