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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日
武平への気持ちが消えたわけではない。ただ、今の小紅は心の中に二人の男を住まわせている。もちろん武平と栄佐だ。そして、武平の占める場所は日毎に小さくなり、代わって栄佐の存在が信じられないほど大きくなっている。つまりは、そういうことだ。
これで良いのだろうか、良いはずがない。かといって、小紅はなすすべもなかった。市兵衛ほどの苦労人が言うのだから、間違いはない。たとえ、どのような手段を用いたとしても、人の心まで操れはしないのだ。
これで良いのだろうか、良いはずがない。かといって、小紅はなすすべもなかった。市兵衛ほどの苦労人が言うのだから、間違いはない。たとえ、どのような手段を用いたとしても、人の心まで操れはしないのだ。