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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日
怖ろしくも残酷極まりない言葉に、気が遠くなる。いっそのこと、このまま死んだ方が楽なのではないかと思いさえする。
準平は小紅を抱えたまま、止まっている駕籠に近づく。駕籠かきはすべて言い含められているようで、黙って駕籠に垂らした筵を上げた。
「良いか、妙な気を起こしたりしたら、あの男がどうなるか憶えておけ。幾ら腕が立つといっても、多勢に無勢で闘えば、あの男だってひとたまりもなかろうよ」