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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日
「小紅は誰のものでもねえ。自分の意思で物を考え、行きてえところにも行くし、惚れた男のところへ行くさ。幾ら死ぬほど惚れてるからって、縛り付けてまで自分のものにしちまうのはただの男の我が儘(エゴ)っていうもんだよ、難波屋さん」
知った顔で当然の理を説かれ、準平の顔が怒りでまだらに染まった。
「煩い! お前は板東碧天、うだつの上がらない大部屋役者だろうが。大根役者は引っ込んでろ」