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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第5章 【残り菊~小紅と碧天~】 いちばん幸せな日
依然として栄佐は小紅を見ようとしない。応えようによっては永遠に栄佐を失うことになるかもしれない。しかし、小紅は自らの気持ちを偽ることなく語った。それが自分を丸ごと好きだと言ってくれた男への精一杯の真心の示し方だと思ったからである。
「そのお人はもうどんなに懐かしんだところで、帰ってはこないもの。私が好きなのは、今、私の側にいてくれる栄佐さんだけ」
「そうか」
栄佐は頷き、改めて小紅を見た。
「そのお人はもうどんなに懐かしんだところで、帰ってはこないもの。私が好きなのは、今、私の側にいてくれる栄佐さんだけ」
「そうか」
栄佐は頷き、改めて小紅を見た。