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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
―そんなことない。私には栄佐さんが立役者になって舞台で堂々と主演張ってる姿が見えるわ。
―小紅、俺はもう大部屋に七年もいるんだ。普通、そんな役者が立て役になりてえなんて言ったら、誰でも大笑いするか、よほどの身の程知らずの阿呆だと馬鹿にするかのどちらかだよ。でも、お前は最初に俺の夢を話したときも笑ったりせずに真面目に聞いてくれた。その時、俺はお前を嫁さんにしてえと思ったんだ。