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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
―な、なに馬鹿なこと言ってるんだか。
 結局、横になったまま匙で食べさせて貰ったのだが、その後、また熱が上がったのは風邪のせいではなく栄佐のつまらない戯れ言のせいだとしか思えない。
 その熱も今朝にはほぼ下がった。まだ微熱はあるようだが、この分では二、三日内には起きられるようになるだろう。
 興行は十数日続くが、栄佐の役は他の役者数人と交代でやるため、今日・明日としか出番はない。だから、今回は見にいくのはやはり無理そうだ。
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