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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
「ここだわ!」
 歓声を上げて扉代わりの筵を跳ね上げて中にすべり込んだ。だが、そこは大部屋ではないらしく、個人用の控え室らしかった。小さな鏡台やら小道具が置いてあるが、意外に狭い。運良く人がいなくて幸いだった。
 小紅はすぐにそこを出て再び通路に戻った。
 と、後ろから何者かに肩を掴まれた。
 ひぃっと、我ながらみっともない声を上げ、恐る恐る振り返る。
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