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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第6章 【残り菊~小紅と碧天~】 運命が動き出す瞬間
舞台は第二幕一場。花魁道中。
これからは花散里の最も華やかな全盛期を描く場面だ。全体を通して悲劇的色彩が濃いこの物語では唯一、明るい場面でもある。
吉原の目抜き通りを朝霧楼の花魁花散里が闊歩する。
しゃなり、しゃなりと紅い高下駄で八文字を描きながら歩いてゆく。若い衆が花散里に緋の番傘をさしかけ、咲き匂う大輪の花さえ色褪せる美貌の花魁は輝くばかり、その後ろには禿や振袖新造が付き従う。