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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】
 この長屋で暮らす前、小紅はしばらく親友の家に居候させて貰っていた。同じお針のお師匠さんのところに通っていたお紀代という娘である。お紀代もまた扇屋という大店の娘だ。お紀代の母の口利きで京屋という老舗にして大店から仕立物の内職仕事を回して貰えるようになったという経緯(いきさつ)があった。
 一部の隙もない視線で小紅が仕立てた晴れ着を検分した後、男は微笑んだ。
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