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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第7章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】
栄佐にしてみれば、今度の配役発表には特別な意味を持っているに違いない。いわば崖っぷち―今度、立て役になれなかったら役者の世界から金輪際身を退こう―とまで思い詰めているらしい気迫が察せられた。だからこそ、小紅は余計に安易な気休めを彼に言うことはできなかったのだ。
その朝も栄佐が中にいることは知りながら、小紅は声をかけずに通り過ぎた。今は彼のためにできることがしたい―、小紅は一途にそう思っていた。
その朝も栄佐が中にいることは知りながら、小紅は声をかけずに通り過ぎた。今は彼のためにできることがしたい―、小紅は一途にそう思っていた。