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第7章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】

　詣でた善男善女が我先にと競い合って餅を拾う光景が見られるが、その中に〝寿〟、〝福〟、〝浄〟、〝徳〟の四字のいずれかが入っていたら、その餅を得た者は一年の幸いを約束されるという言い伝えがあった。
　小紅は長い石段をゆっくりと辿っていく。江戸っ子たちが〝息継坂〟と呼ぶこの石段は急な傾斜がずっと続いている。女年寄りや子どもは途中で一度は休んで上らねばならないほどだから、この名で呼ばれるようになったという。