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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第1章 【残り菊~小紅と碧天】 始まりは雨
「や―」
止めてと言おうとしたのか、いやと言おうとしたのか判らない。ただただ動転していて、小紅は小さな両手で夢中で準平の胸板を押し返した。
しかし、逃れようにも後頭部をしっかりと押さえつけられていて、逃げられない。舌が入ってこようとしているのが判り、死んでも許さないと唇を固く引き結んだ。
ほどなく小紅の身体は邪険に突き飛ばされた。勢いでよろめき転びそうになるのを必死で踏みとどまる。