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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い
父が亡くなって以来、母の関心はますます一人息子に注がれた。家督を継いだものの、彼は荒れに荒れた。かつての父の愚行を真似て屋敷の奥に仕える若い侍女に片っ端から手を付けたこともあった。嫌がる若い奥女中を半ば手籠めに近い形で空き部屋に連れ込んだこともある。
だが、ある日、そんな日々にも自分にもほとほと嫌気が差した。酒や女体に溺れて憂さを晴らそうとしても晴れず、鬱憤は澱のように奥底に積もるばかりだった、日々。
だが、ある日、そんな日々にも自分にもほとほと嫌気が差した。酒や女体に溺れて憂さを晴らそうとしても晴れず、鬱憤は澱のように奥底に積もるばかりだった、日々。