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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い
あれから七年の月日が流れた。幸いにも源五郎が怖れていた最悪の事態にはならず、角倉家は母の兄―つまり、栄佐の伯父が一時的に後見を預かるという形で存続を許された。それもそのはず、名門の直参旗本八千石の当主が出奔してゆく方知れずなどと幕府に報告できるはずもない。
当主は病にて療養中と届け出て、今は筆頭老中として幕府でも重きをなすやり手の伯父が角倉家の後見を引き受けるという形で事をおさめたのである。
当主は病にて療養中と届け出て、今は筆頭老中として幕府でも重きをなすやり手の伯父が角倉家の後見を引き受けるという形で事をおさめたのである。