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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第8章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 すれ違い
途中で中年の人足風の男二人とすれ違おうとした瞬間、右側の男と肩がぶつかった。
「手前(てめぇ)、どこに眼をつけて歩いてやがる。気を付けろ」
語気も荒く怒鳴ると、いかにも気弱そうな男は震え上がって蒼白になった。
「に、兄さん、勘弁してくれ」
当人は気づいていないが、超絶美貌の彼は怒ると、かなりの迫力がある。殊に相手を斬りつけるかのような切れ長の美しい眼は殺気すら帯びるのだ。