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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬
「―良い身体してやがる」
 栄佐の灼けるようなまなざしが薄桃色の突起を頂く乳房にひたと注がれる。
「この身体をあの男に好きなようにさせてやったのか、小紅」
 小紅からの返事はなかった。いや、応えられるような状態ではなかった。小紅の衝撃は尋常ではなかった。難波屋の準平に手籠めにされかけてから、まだ一年も経っていない。いまだにあのときの恐怖は忘れられず、夜半に悪夢にうなされて飛び起きるほどなのだ。
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