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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬
 もう、終わりだ。
 栄佐は深々と息を吐き、力尽きたようにその場にくずおれた。彼の傍らには忘れ去られたようにポツンと小さな皿が残されている。それは小紅が栄佐と食べようと持ってきた桜団子だった。
その頃、逃げるように住まいに戻った小紅は床に身を投げてすすり泣いていた。
 酷い、酷い。幾ら私を疑っているからって、あんなことをするなんて。栄佐さんなんか、大嫌い。顔も見たくない。
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