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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬
いつものように来客用の小座敷に通され、ほどなくお彩が姿を見せた。今日は女中ではなく、お彩自身が茶菓を載せた盆を持っている。大内儀自身がわざわざ仕立屋に茶菓を運ぶとはどういうことなのか。お彩は大店の内儀らしい品の良さを持った女人だが、やはり身分や上下の区別はわきまえる人だ。
そこはお彩の人柄というよりも、京屋ほどの大店の大内儀となれば致し方のないことだと小紅は察している。上に立つ者は時に厳しく時に優しく。それが奉公人に対する基本だ。
そこはお彩の人柄というよりも、京屋ほどの大店の大内儀となれば致し方のないことだと小紅は察している。上に立つ者は時に厳しく時に優しく。それが奉公人に対する基本だ。