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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬
「徳太郎は我が子ながら良くできた子で、幼い頃から我が儘を言ったことのない聞き分けの良い倅でした。いつも口数も少なくてね。しっかり者でおきゃんな姉と利かん気な弟の間で、大人しすぎるのではないかと心配してしまうくらい物静かな子だったの。姉兄弟(きょうだい)で欲しいものがあっても最初に諦めるのは徳太郎、何に対してもおよそ執着というものがなくて、何かを欲しがるということは一度もなかったから、私が手を焼くことはなかった」