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第9章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】　嫉妬

　だが、自分がたとえ一時でも京屋の嫁になっても良いと考えてしまった裏には、栄佐への当てつけしかなかった。自分の身体をまるでいつでも好きなようにできる玩具のように扱い、手籠めにしてしまった栄佐に対して、自分は望まれて江戸一の大店に嫁いでゆくのだと見せつけてやりたかった。
　小紅が選んだのは売れない大部屋役者ではなく、江戸いちばんの呉服太物問屋の主人なのだと胸を張ってやりたかった。