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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬
「小紅さん」
驚愕した市兵衛は慌てて小紅から手を放した。小紅は急いで彼から距離を取り後ずさりながら、まるで生命乞いをするかのように手を合わせた。
「お願い、後生だから堪忍して。何もしないで。痛くしないで、あんな恥ずかしくて辛い想いは二度としたくないの。お願いだから、許して下さい」
その場に力尽きて座り込み、同じ科白を呟き続ける小紅の様子は誰が見ても普通ではなかった。