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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第9章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 嫉妬
「これで何もかも納得がいった。お前が何で今日、泣いてばかりいたのかも。私が口づけただけで屠られる直前の兎のように怖がって助けを求めたのかも判ったよ。なに、お前のことは調べれば、すぐに判る。お前の惚れてるその隣の男のことも突き止めて、番所に突き出してやるから、安心しな」
市兵衛が踵を返そうとする。その背に小紅は縋りついた。
「市兵衛さん、お願い。止めて。そんなことはしないで」