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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
狂おしい口づけは延々と続き、小紅はついに見ていおられず、踵を返して逃げるように家に飛び込んだ。小紅の瞳に涙が光っているのを栄佐も美桜も見逃しはしなかった。
ピシャリと音がして小紅の住まいの戸が閉まったのと栄佐の頬がピシリと鳴ったのはほぼ時を同じくしていた。
「チッ、何だよ、愉しんだのは俺だけじゃねえだろ」
悪びれもせずに呟く栄佐の唇からは鮮血が糸を引いてしたたり落ちていた。