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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
美桜は威勢の良い啖呵を切ると、しどけなく緩んだ着物の胸許をかき合わせた。今日のなりは紫と黒の縞柄の銘仙だ。半襟は黒繻子、帯も黒。髪はきっちりと結わず頭上で大きくゆったりと巻いて纏めている。挿しているのは銀の簪が一本きりだ。
誰しもができる装いではないし、ちょっと間違うと、だらしない格好にしか見えない。が、美桜がこれをやると不思議にサマになっている。まさに粋という形容がぴったりの着こなしだ。
誰しもができる装いではないし、ちょっと間違うと、だらしない格好にしか見えない。が、美桜がこれをやると不思議にサマになっている。まさに粋という形容がぴったりの着こなしだ。