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第10章 第一部・第二話【赤とんぼ～小紅と碧天～】　心の嵐

「最低だ。あたしはね、力や金に任せて非力な女を玩具(おもちや)にするような性悪男をごまんと見てきたよ。何しろ、商売が商売だからね。岡場所の女将ともなれば、水揚げで初めて客を取る娘には、手籠めも同然に抱かれなきゃならないこともあるって言い聞かせてきたよ。だけど、小紅ちゃんは素人娘じゃないか。それもあんたらは惚れ合ってるんだろ。なのに、何でそんなことになっちまったんだい？」
　栄佐はまたも美桜に叩かれた頬を押さえ、自嘲めいた笑いを浮かべた。