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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
少し前、随明寺で気まずい別れ方をしてしまったため、市兵衛はもう顔も見せてはくれないのではと思っていたのに、彼は先日のことが嘘のように淡々としていた。
「先日の絵馬堂での出来事も謝らなければいけないと思っていました。私、失礼なことをしてしまって」
「何を言うのですか。あれも私が悪いのですよ。あなたの意思もろくに確かめもせずに、触れたり口づけたりしたのですから」
心なしか市兵衛の頬が少し紅くなっている。軽く咳払いした後、彼は続けた。
「先日の絵馬堂での出来事も謝らなければいけないと思っていました。私、失礼なことをしてしまって」
「何を言うのですか。あれも私が悪いのですよ。あなたの意思もろくに確かめもせずに、触れたり口づけたりしたのですから」
心なしか市兵衛の頬が少し紅くなっている。軽く咳払いした後、彼は続けた。