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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第10章 第一部・第二話【赤とんぼ~小紅と碧天~】 心の嵐
「俺にはお前さえいてくれれば良い、立て役になんかなれなくても構いはしねえ。いちばん怖いのは、お前を失うことだって、今回のことでつくづく思い知らされたよ、小紅」
もう少しだけ、このままでいても良いか?
小声で問われ、小紅はこっくりと頷いた。栄佐が遠慮がちに小紅の漆黒の髪に顎を押し当てた。しばらくその香りを愉しむかのように眼を閉じていた彼はややあって未練を振り切るかのように、小紅の身体を自分から押しやって離した。
もう少しだけ、このままでいても良いか?
小声で問われ、小紅はこっくりと頷いた。栄佐が遠慮がちに小紅の漆黒の髪に顎を押し当てた。しばらくその香りを愉しむかのように眼を閉じていた彼はややあって未練を振り切るかのように、小紅の身体を自分から押しやって離した。