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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
―私は自分の好きになった男(ひと)を信じる。
 あのときは、どうだっただろう。栄佐が布団から顔を出して―。小紅は首を振る。
 いいえ、駄目。考えてはいけない。あのときのことを思い出しても駄目。
 小紅は考えるよりも前にまた行動した。栄佐の布団を頭から引きはがしたのだ。
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