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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
その日の午後、小紅は思い立って深川に赴いた。訪ねたのは美桜が営む妓楼〝緋扇(ひおう)〟である。岡場所は吉原のように幕府が容認する公設の歓楽施設ではない。従って、表向きは〝緋扇〟も小料理屋の体を装い、そこで働く女たちも仲居として雇われている。
勝手口からおとないを告げると、しばらく待たれされた末、下女が部屋に通してくれた。二階の奥まった座敷は特に接客用のものではなく、女が客を取るときの部屋らしい。
勝手口からおとないを告げると、しばらく待たれされた末、下女が部屋に通してくれた。二階の奥まった座敷は特に接客用のものではなく、女が客を取るときの部屋らしい。