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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
「ごめんね。こんな部屋に通しちまって。今、生憎と全部、使える部屋がなくてさ。客間はちょっと大事な客が来てるんで、どうしても空けるわけにいかないのよ」
 美桜はいつものように銘仙の縞柄の小袖を粋に着こなしている。
「いいえ、私の方こそ、お忙しい時間に申し訳ありません」
 小紅が律儀に頭を下げるのに、美桜は腕を組んだ。
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