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狂人、淫獣を作る
第1章 獲物

    ※  ※  ※

 「ジュン、お前相手いねえんじゃねえのか? どうやって俺とSMを語り合う?」後藤は野田をトイレの壁に押し付け、そう詰め寄った。
 「い、い、い、いるんだ、あ、相手が」
 ――見栄張ってんじゃねえよ……
 「か、可愛いんだ……ものすごく……僕の高校に通ってる二年生、もうすぐ三年生だけど……ぼ、僕、彼女に告白されちゃったんだ。『先生のことが大好きなんです』って。人生で初めて……若くてぴちぴちの十七歳なんだ、う、う、うまく言えないんだけど、それはもう……ものすごく可愛いんだ……! し、し、しかも、処女をもらっちゃった、『先生にもらって欲しいから』って……初めてのセックスが、処女の子で、しかも性格も顔もものすごく可愛くて初々しい子だなんて、なんて幸運なんだ! ずっと童貞だったのは、彼女と結ばれるためだったんだよ……!」
 後藤は唖然とした。
 野田の言った言葉の意味が、しばらく理解できなかった。
 沈黙が流れる。
 時間にしてほんの数秒だったが、後藤にはそれが何時間にも感じられた。
 突然後藤は、自分でも知らない間に野田の胸ぐらをつかんでいた。
 「た、タケちゃん……ど、ど、どうしたの……」
 ――なんだそりゃ……?
 ――お前に惚れた?
 ――どんな悪趣味女なんだよ?
 後藤は大きく深呼吸すると、小刻みに震えている拳を野田の胸元からゆっくり離し、うつむいた。
 「ほ、ほ、本当に可愛いんだ……それに、やっと、やっとずっと夢見ていた念願のえ、え、SMプレイもできるんだ、彼女も喜んでくれるよ」
 そう言って野田は後藤の顔を覗き込んできた。
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