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狂人、淫獣を作る
第4章 淫獣
 後藤の目が大きく開き、その形相は凄まじさを帯びている。
 「私はリナにさらに拷問を加え、五年前のことも含め真実と必要な情報を全て聞き出し、そして写真のことを教えて親に相談するよう指示したのは誰かを聞き出しました……写真の話を白状した時点で誰だか分かったので、これは不必要な拷問でしたがね、ははは……リナは息も絶え絶えの中で私に言いましたよ……決してセックスの快楽が忘れられないのではなかった、十八になった頃、塾の成績が落ちてきたことへの折檻という名目でその男に無理矢理セックスの快楽を……被虐の快楽を教えられていった、とね……白状した後がまた可愛いんですよ、『ご主人様、秘密を漏らして申し訳ありません』という言葉を何度も何度もうなされるように口にするんですから……」
 源は懐から、しわになってやや変色した一枚の名刺を後藤の前に放り投げた。
 それは塾の経営者としての後藤の名刺で、ペンで携帯番号らしき数字が書かれている。
 後藤は突然思い切り拳で畳を叩きつけた。部屋が揺れるかと思うほどの衝撃が起こる。
 ――こいつが……
 ――まさか……?
 ――見た目はともかく……
 ――どもりもなく……
 ――話し方も性格も違いすぎる……
 源は後藤の拳に全く動じる様子もない。
 「リナがその男の手に落ちたころ、私はとうとう警察に捕まりました。あのころの私は本当に思慮の浅い人間でした……悪あがきしましてね、しばらく逃亡していたのですよ。捕まる直前になって、逃げ切れるはずもないのに、顔を変えてしまえば逃げられるなどと思っていましてね……そして私は理科室から盗んで隠し持っていた硫酸を自分で顔にかけた」
 そう言うと、源はゆっくりサングラスを外した。
 潰れている片目と、わずかに開いている片目とがあらわになった。
 夕日で真っ赤に燃え上がる源の顔は、すでに刻み込まれているただれた痕がさらに業火に灼かれているかのような、壮絶な形相へと変貌していた。
 いや、源自身の奥底からわき出る情念の炎に、今、まさに灼かれていた。
 そしてわずかに開いている片目の奥からは、深い深い地獄の淵から放たれる、妖気をまとったような殺気があふれ出ていた。
 後藤の体は、彼の意思とは関係なく後ずさりしていた。何かを言おうとしても口が石化したように、動かない。
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