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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

「ならば、恥の上塗りとはなりますが、本懐を遂げるお許しを、どうぞ お与え下さい」

「ほ、本懐……?」

 ヴィヴィのどもり声とは対照的に、

「ええ。私はお嬢様を、ずっとお慕い申し上げておりました。貴女が16歳で、ロンドンのオーウェン邸にて初めてお会いした、その時から――」

 リーヴはすらすらと澱みなく、己の心の内を吐露してくる。

「え……?」

(慕う……? って、リーヴ……っ 私の事、お、女として見てたってこと……?)

「そして、ずっと夢を見ておりました。いつの日にか、お嬢様と……。ヴィクトリア様と、閨を共にする事を――」

 執事の言葉に、ヴィヴィは内心首を捻っていた。

 ネヤ……?

 先程から、本懐……など、小難しい言葉を使われて。

(ん……? ネヤヲトモニスル……? 閨……?

 ――って、……わ、私と “寝たい” ってこと……?)

「―――っ!?」

 あまりにも驚いたヴィヴィが、灰色の瞳を真ん丸にして見返す先、

「どうか、一晩だけでも、私に情けを掛けて下さい」

 そう囁くリーヴは、高いスプリングの上に膝で登って来て。

「い、いや……っ!!」

 やっと自分の置かれた状況を把握したヴィヴィ。

 1ヶ月前。

 米国のネイサン・チェン選手に忠告された言葉を、その時になってやっと思い出した。

『ヴィヴィ……。女として、その無防備さはヤバいと思うけれど?』

『今度、そう易々と男の部屋に入ったら、本当に襲っちゃうからな?』

 ネイサンの言っていた事は、確かに正しいのかもしれない。

 けれど、

 けれど、リーヴは “執事” だ。

 金を払って雇っている使用人だ。

 どうして主である自分が、執事に襲われるなんて心配をせねばならないのか?

 腰が抜けた状態で、両手でベッドの上を後ずさりするも。

 簡単に間合いを詰めたその人は、主のシャツワンピ越しに両太ももを跨ぎ、

 下した腰に体重を掛け、動きを封じ込めてくる。

「やだっ! ど、どいて……っ!!」

 唯一自由な両腕を、無我夢中に振り回す。

 リーヴの下から脚を抜きたくて何とか身を捩るも、びくともしなくて。

(うそ……っ うそっ なんで……)

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