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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章       

匠海が離婚しようが、もちろんヴィヴィは元鞘になんて収まるつもりはない。

あの日――自身の口で告げた通り、兄妹の運命は どこをどうしても交わらないのだから。

ただ心配なのは、これで自由になる匠海の これからの言動だった。

大きな障壁の一つであった婚姻、そして妻という束縛から解き放たれた兄。

ヴィヴィが頬を打ったあの時、もう匠海の中の妹は砕け散ったと思いたい。

けれど、そうじゃなかったら?

これで「兄の遺伝子を持つ篠宮の跡取り」と「バツイチ・フリー」の両方を手に入れてしまった匠海。

そんな兄が、次に取るであろう行動とは――

ローテーブルにソーサーを置く静かな音。

微かな衣擦れの音をさせながら、組み替えられる長い脚。

そちらに視線を送れば、当然の様にフィリップと目が合い、ましてや にっこりと極上の笑みを向けられる。

(本当、美の無駄遣い……)

心の中で酷い賞賛を送ったヴィヴィは、再び茶器を持ち上げた彫刻美形男子に、つっけんどんな声を投げ掛ける。

「ねえ」

「なんだい?」

「付き合う?」

「ん?」

「私達、付き合ってみる?」

「ぶ……っ!!」

黙っていれば他の女が寄って来るほど美麗な男なのに。

珊瑚色の唇から盛大に茶色の液体を散布したフィリップに、ヴィヴィは嫌悪も露わに眉をしかめた。

「きたな~~い」

冷静に白クロスを差し出す執事・朝比奈から、動転したフィリップが受け取り口元を拭う。

ていうか、朝比奈もいたのか――

あまりにも空気の様に存在していてくれるので、執事の前で他の男に告白?するなんて事をやってのけてしまったヴィヴィ。

でも、もう今更 取り繕うことも出来ないか、と早々にどうでも良くなった。

「も、申し訳ないっ っていうか! ようやく俺の良さに気付いてくれたんだね、ヴィー!!」

喜色満面で寄ってくる相手にも、ヴィヴィは微かに首を傾げる。

「……う、うん……?」

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