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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章       

「~~~っ!!」

ヴィヴィが提示したものが小切手帳だと気付いた時の、匠海がキレた音を聞いた気がした。

両の手首に感じた、鈍い痛み。

小切手帳が床に落ちる音。

壁に押し付けられた衝撃。

そのどれが、一番に感じたことだったろう?

どうでもよい事が気になったヴィヴィに対し、手首を掴んで壁に妹を押し付けた兄は、今にも唸り始めそうな獰猛さだった。

「俺と「別れたい」って、莫迦王子の方が良くなったからのか?」

下らない勘繰りの言葉に、ヴィヴィは胸の内で溜息を噛み殺し、落ち着いてから口を開く。

「違うわ。フィリップとは、おにぃ……、“貴方” と別れた後からで――」

「……っ 嘘を吐くなっ!」

「………………」

勝手に問い詰めておきながら、その返事を最後まで聞かないなんて。

恫喝まがいに怒鳴られても、胸の内はただただ凍えていくだけなのに。

自分は離婚という痛みを伴った決断をしてやったのに、元不倫相手には別の相手が出来 ちゃっかりしていたのが、そんなに頭に来たのだろうか。

「やっぱり、そうじゃないか……。俺の思っていた通りになったじゃないか!」

「……何のこと?」

「ずっと……ずっと、不安だった。お前と両思いになっても、恋人同士になれても――」

「え……?」

頭一つ分の高さから睨み下ろしてくる匠海にも、ヴィヴィの無表情は揺るがなかった。

だが、

(不安……? って、あの、お兄ちゃんが……?)

いつも堂々として主導権を握り続けていた兄の言葉に、薄い胸の内に湧き上がる疑問。

「俺はいつか飽きられる、いつか捨てられる……。ヴィクトリアが “俺なんかで満足するはずない” って!」

「……なに、言って……?」

とうとう眉根を寄せ、怪訝そうに表情を歪めたヴィヴィ。


飽きる?

捨てられる?

私が、じゃなくて、お兄ちゃんが――?

何で?

どうしてそうなるの?


私は「好き」ってちゃんと口にしていた。

それこそ何度も何度も。

「黙れ」と言われたって「お兄ちゃんじゃないといや」と、気持ちを殺さず叫んできた。

理不尽なことをされても、ずっと耐えて、全てを捧げてきた。

なのに、何なの――?

“俺なんかで満足するはずない” って。

そうじゃないでしょう?

“私なんかで満足出来なくて” 兄は裏切ったんじゃないか!

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