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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章       

「あ……、も、ダメ……っ」

散々覚えさせられた舌の感触に、先程まで彼を包んでいた秘めたところが しくりと疼く。

けれど、自分はまだ勉強しないとならないし、夕方からはまたリンクで「ジャンプコーチ・クリス」の厳しい特訓が待っているのだ。

「分かってる。…………、ヴィー?」

「ん?」

「もう、君は “大丈夫” だ」

「…………、うん……」

ふいに向けられた真摯な瞳に、一瞬息を止めたヴィヴィは、それでもこくりと頷いた。

「無事、卒業試験をパスして――」

「……うん」

「五輪も悔いなく滑って――」

「うん」

「で、全てに満足した暁には、潔く俺様と結婚するのであ~~る!」

「……なんでやねん」

“結婚” の大安売りにも程がある、とヴィヴィがじと目で相手を見やると、睨まれたフィリップはさも可笑しそうに笑ったのだった。



その翌日。

ヴィヴィの元に届いた一通のメッセージ。

それを一読し すぐさま消去したヴィヴィは、何故か残っていた電話番号とメールアドレスも同じく抹消した。

リンクに行く準備を再開する手付きに、乱れたところは無く。

陰干ししていたスケート靴を手に取ると、状態を確認しながら専用バッグに慎重に入れた。

「今日は特に冷えるそうですよ」

先程、執事にそう助言された通り、羽織るものを持っていこうと歩を進めたクローゼット。

だが、その姿見に己の姿が映った途端、必死で平静を装っていた灰色の瞳が一気に歪み。

嗚咽を殺した悲痛な泣き声が、しゃがみ込んだ膝の中に吐き出された。

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