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第21章 .

「バレエ音楽『恋は魔術師』――スペイン南部・アンダンルシア地方にジプシーとして暮らす未亡人カンデラは、新しく出来た恋人カルメロと恋に落ちます。

　しかし亡くなった元夫が亡霊となり、２人の恋路を邪魔してきます。困り果てたカンデラが美しい友人・ルシアに亡霊を誘惑するように頼み、その間に恋人のカルメロとめでたく結ばれる――という物語です」

「えっ　亡霊!?　バレエに幽霊が出てくるんですか？」とアイドル。

「はい、そうなんです。バレエでは白塗りをした不気味な幽霊と『恐怖の踊り』を踊るんですね。そして劇中のクライマックス――悪霊払いの場面で演奏されるのが『火祭りの踊り』。とても有名な曲で、オーケストラのコンサートピースとして演奏される機会が多いですね」

アナウンサーの説明に、辛口として人気の社会学者が続ける。

「僕もバレエを観た事があるんですが、焚き火の周りで主人公のカンデラが踊り狂いながら悪霊退散をしていて。バレエとフラメンコの融合も素晴らしいですし、迫力がありとても見ごたえのある作品でしたよ」

「古市さんの仰る通り、篠宮選手のＦＳでも　そのストーリーがしっかりと描かれています。注目の集まるジャンプはもちろん、演目にもぜひ注目してご覧下さい。それでは、そろそろ６分間練習が終わるようですので、実況席にお返しします――」

スタジオから引き継いだ実況席に音声が切り替わり、画面上には女子シングルの６分間練習が映し出される。

「ここからは実況を私　清水が、解説をプロスケーターであり、トリノ五輪金メダルの荒河さんとでお送りいたします。荒河さん宜しくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」

「篠宮にとって９度目となるグランプリ・ファイナル。全６回のグランプリシリーズで勝ち進んで来た６名の選手だけが出場資格を得る今大会。篠宮は15歳でシニアに上がって以降、このファイナルへの切符を一度も逃した事がありません」