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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 「ふぅ」と、らしくない深い溜息を零す目の前の男に、ヴィヴィは何を言われたのか、一瞬解らなかった。

「…………は…………?」

 ぽかんとするヴィヴィに、太一は涼やかな目元を綻ばせ、解り易く説明を続けてくれる。

「うん。円の籍は、今の両親の叔父叔母夫婦に入ってるんだ。円から見て、祖父母にあたる人達だね」

 ソファーテーブルの天板に、指で線を描いて説明してくれる太一に、

「はあ……。あ、だから、苗字が同じなんですね?」

 円は出会った頃から “真行寺” を名乗っていたし、大学でも勿論そうだった。

「そうなんだ」 

 ヴィヴィは小さな頭の中で、親族図を思い浮かべてみる。

 血縁的に見れば、円は太一のはとこ(6親等)

 けれど法律的に見れば、円は太一のいとこ違い・従叔母(5親等)

 つまり、円と太一は、遺伝的にも法律的にも、兄妹で無い事になる。

 親友からは そこまで立ち入って家族関係を聞かなかったので、初めて知る事実に、ヴィヴィはしばし呆然としていた。

 こんなに仲の良い太一と円が、血縁的にも法律的にも “兄妹” で無かったとは――。

(……ん? おや……? あれ、でも……「息子と結婚させる」……って?)

 何だか重大な発言を聞き漏らした気がして。

 しばらく首を捻っていたヴィヴィ。

 しかし、

「ぅええっ!? じゃ、じゃあ、ご両親は、太一さんとマドカを……、けっ 結婚させたがってるんですかっ!?」

 やっと一番重大な事に気付いたヴィヴィは、そう声を張り上げるも、

「そうなんだ」

 受け止める側の太一は、妙に冷静だった。

「け……っ!? けっけっけっ」

 言っておくが、笑ってる訳じゃ無いので、あしからず――。

 みるみる頬を染めていくヴィヴィは、「結婚」の二文字が何故か言葉に出来なくて。

 一人で雌鶏みたいに、わたわたと焦っていたのだが。

 そこへ、かたんと小さな音がして、思わず振り返ったヴィヴィ。

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