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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 氷面に大きく弧を描いたのち、

 左脚を後ろに振り上げ飛び上がる、フライングからのシットスピン。

『Don't dab your eye, mein Herr,
 ―驚かないで、あたしの恋人

 Or wonder why, Mein Herr.
 ―わけは聞かないで、あたしの恋人』

 徐々に腰を上げていきながら、閉じていた扇子を開き。

『I've always told you I was a rover.
 ―「あたしは遊び人」って いつも言ってたでしょ

 You mustn't knit your brow,
 ―眉をひそめなくてもいいのよ』

 腰高で左脚を支えながら、扇子を持った右手は軸足の右脚へと下して行く。
 
『You should have known by now
 ―あなたにはもう解っているはず

 You'd every cause to doubt me,
 Mein, Herr.
 ―いつも私を疑っていたでしょ
  あたしの恋人』

 回転速度を保ちつつ、I字スピンを回れば、

 黒フリルのミニスカートの内側、赤いレースの裏地が、妖艶にはためいていた。

『The continent of Europe is so wide,
 Mein Herr.
 ―ヨーロッパ大陸は とっても広いの
  あたしの恋人』

 開いた赤扇で仰ぎながら、助走へと入り、

『Not only up and down, but side to side,
 Mein Herr.
 ―上下だけじゃなくて 左右にもよ
  あたしの恋人』

 肩高へ伸ばした両腕の先、

 親指を立てた拳を、上から下へと手首を返す。

『I couldn't ever cross it if I tried,
 Mein Herr.
 ―横断しようとしても 無理だったわ
  あたしの恋人』

 軽く飛んで見せた3回転サルコウに、ワッと歓声が起き。

『So I do...
 ―だから あたしは……』

 着氷の流れの中、左の掌で自分を庇う様に、右の肩を抱き、

『What I can...
 ―出来ることをするの……』

 畳んだ扇を握った右手首を、おでこに当て、

 官能的に喘ぐ振りで、顎を上げながら金の頭を仰け反らす。

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