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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 匠海がどれだけ、自分に関連するものを集めていようが、

 そこから、どれだけ妹の事を心に留めていて、家族の一員として慈しんでくれていると伝わってきても。

 それでも、

 画像から滲み出ていたのは、兄夫婦の “暖かな家庭” の雰囲気。

 何とも言えない淋しさと虚しさを紛らわそうと、目の前にあるグラスからセロリスティックを摘み、シャクシャク咀嚼してると、

「ウサギ、みたい……」

 真向かいに腰かけていたクリスが、腕を伸ばして撫でなでしてくる。

「ん」

 ニンジンスティックを摘み、クリスの口元へ持っていけば、

 同じく無表情で ぼりぼり咀嚼し始めた双子の兄に、

「クリスのほうが、ウサギっぽいわ」

「この無表情、クセになりそうっ」

と、周りの女子にウケていた。
 
 大きな瞳を細めて皆を見つめながらも、

 頭の中にはどうしても、先ほど目にした画像が ちらちらと過ぎって。

(解って、はいるの……) 

 匠海には “彼の家庭” があって、

 それは妹のヴィヴィとて、踏み込んではならぬ場所。
 
 もう、いい加減に理解しなければならない。

 どう転んだって、兄は自分の元へは戻って来てくれはしないと。



 そう、解ってはいるのに――。


 
「ふぅ……」

 薄い唇から無意識に漏れた嘆息。

 けれど、そんなものを打ち消すくらい、賑やかな歌声が辺りに響き始めていて。

 それは、英語・スペイン語・フランス語・ロシア語・ラトビア語・日本語と様々だったが、メロディーはただ1つ。

「♪It's a small world after all
 ―世界は せ~まい

 It's a small world after all
 ―世界は お~なじ

 It's a small world after all
 ―世界は ま~るい

 It's a small, small world
 ―ただ ひ~と~つ~♪」
 
 どうやら、ビールで良い気分になったらしい面々。

 昼間っから『It's a small world』を合唱し、盃を揺らしており。

「ただの酔っ払い、ですやん……」

 世界各国の名スケーターを、関西弁で一刀両断したヴィヴィ。

 もちろんすぐさま、シラフで合唱の輪に加わったのだった。







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