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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

「………………」

(……全く記憶に、ございませぬが……)

 兄の寝そべるベッドの傍らに立ち尽くした妹は、深酒した後の自分の言動に、全く身に覚えが無く。

「ホントだって。凄く熱烈なハグに感激して応えてたら、ヴィヴィ、抱き付いたまま、眠ってしまって」

「………………」

 その時の事を思い出してか。

 ふっと瞳を細めた匠海の表情に、何故か鼓動が跳ねたが。

 今はそれどころでは無いので、とりあえず無かった事にして、頭の片隅に追いやっておく。

「それで、ベッドに寝かし付けて帰ろうとしても、シャツ掴んだまま離してくれなくて。で、まあ……、結局こうなってる」

 端的に説明した兄は、横たわったまま、広い両肩を上げて笑っていた。

 匠海の説明は、きっと本当なのだろう。

 いや――兄の事だから、ちょっとは脚色されているかも知れないが。

 それに認めたくはないが、

 実際、自分は目が覚めたその時、逞しい胸に縋り付いていたし。

 とは言え――

「……し、したの……?」

 そこだけは、どうしても確認せねば。

 勇気を振り絞り、薄い唇を開いたヴィヴィに、

「したって、何を?」

 きょとんと尋ねてくる匠海に、両拳をぎゅうと握り締めたヴィヴィは、押し殺した声で喚いていた。

「~~~っ “えっち” に決まってるでしょっ」



 したの?

 してないの?

 どっちなの~~っ!?



 それでなくても、昨夜までのヴィヴィは “性欲の塊” だったのだ。

 それも、

 酔った勢いで匠海を犯すくらい、難無く やってのけそうなほどに――
 
 1人アワアワしているヴィヴィに、くすりと笑い声を上げた匠海。

「な、なにようっ?」

 思わず突っかかった妹に対し、ベッドに寝そべったままの兄は、余裕綽々で。

(なんか、ムカつく……。どっかの王様ですか、アナタハっ!?)

 大きな扇子を持った美女2人、傍に侍らせていても違和感ないくらい、

 起き抜けの匠海は、気怠げながらも麗しくて。
 
 思わずぱっと視線を逸らせたヴィヴィに、匠海が返してくれた回答は。

「自分の躰に聞いてごらん?」

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