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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

 兄が紅茶を用意してくれている間、

 ヴィヴィはリビングスペースに据え置かれた漆黒のソファーに腰掛け、しげしげと部屋の中を見回していた。

 41HOTEL は、全体的に重量感のあるクラシックな造りなのに、リネン類やファブリックはシンプル・モダンでセンスが良く。

 白い壁に、黒い家具・白黒の大きなギンガムチェックのカーペットが映え。

 壁に飾られた絵画も、白いキャンバスに黒一色で描かれたシンプルなもの。

 火が入れられた暖炉、テーブル、キャビネットには、10本もの太いキャンドルが灯されていた。

 時刻は16:00。

 ロンドンの空はまだ煌々と明るいが、キャンドルの柔らかな炎を見つめていると、何故かうっとりとしてしまう。

 その一方、

(兄と妹が泊まるにしては、ロマンティック過ぎやしませんか……?)

 どうやら “28室に客室を絞り込み、最高のおもてなしをする” をモットーとしているらしいホテルスタッフに、ヴィヴィは内心首を傾げていた。

「さあ、お待たせ致しました。お姫様」

 からかいながら、黒の縁取りが鮮やかな白磁のティーセットを、目の前の黒テーブルへ置いてくれた匠海。

「あ、ありがとう……」

 礼を言いながらポットに手を伸ばせば、一瞬早く匠海に取り上げられ、トポポと良い音を立てながら注がれてしまった。

「……オータムナル(秋摘み)……もう、そんな時期……」

 心地良い香りとベルベットを思わせる滑らかな舌触りは、ついつい茶器に手が伸びる美味しさ。

「そうだな。ヴィクトリアが日本に帰国していた頃は、あんなに蒸し暑かったのにな」

 そんな相槌を打ちながら、匠海はウェルカムドリンクだったらしい、ヴィーヴ・クリコを傾け始めた。

「この部屋……お兄ちゃんの部屋と、少し感じが似てるね?」

 松濤の匠海の部屋は、ある年齢の時から黒と焦茶を基調にした、落ち着いた内装に整えられていた。

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