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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第15章     

(な、なんだぁ~~っ!? なんで、ヒースロー空港……???)

 そう。

 辿り着いたのはロンドン・ヒースロー空港。

 そして、リムジンを利用した理由も その時になって解かった。

 何故ならば、どう考えても日帰り旅行とは思えない、尋常でない量の荷物の為だったのだ。


 
「ねえ……、本当にどこに行くのぉ~~?」

「大学は~~? スケートは~~?」

「一体、何時になったら帰してくれるの~~?」

 天井一面が青いライトで照らされたシックな廊下。

 3人分のパスポートと航空券を持ったクリスと、隣でスキップでも始めんばかりに浮足立った様子のダリル。

 そんな2人に流石に不満の声を上げ始めたヴィヴィは、薄い唇を尖らせながらも着いて行くしかない。

「お疲れ様でございます。ようこそおいで下さいました。篠宮クリス様、ヴィクトリア様、ダリル・フォスター様。パリへのご出発迄、まだお時間がございます。どうぞ素敵な時間をお過ごし下さい」

 一見してフルオーダーと判るスーツを纏ったラウンジスタッフが、にこやかにファーストクラス専用ラウンジを案内してくれるも、

「え? パリ……っ!? て、ちょっ これからパリに行くの?」

と1人でパニくるヴィヴィは、それどころではなかった。

 金曜の午前中だというのに、ラウンジには自分達以外の客はおらず。

 巨大なハブ空港の喧騒からかけ離れた空間は、優雅で落ち着いた雰囲気に包まれていた。

 そんなフロアに響く、女装家の甲高い歓声。

「きゃあ! ボランジェのロゼに、ティタンジェの白……だけじゃない、プレリュード グラン・クリュまで揃ってるゥ~~❤」

 シャンパンに目がないダリルは、ブルネットの巻き毛(ウィッグ)が決まった首元で うっとり両手を組むと、

 このラウンジの特徴であるシャンパンバーから離れようとせず。

 2人分のティタンジェを注いだクリスはといえば、妹の手を引きながら奥のソファースペースへと移動する始末。

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