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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章    

 これ以上、匠海の傍にいる利点は、今のヴィヴィには皆無だった。

 それどころか不利な事ばかり――。

 自分を義姉と比較しては落ち込み。

 兄夫婦の宝物であり、自分の甥でもある匠斗も愛せない自分に気付かされ。

 そして、あんなにこっぴどく裏切られたというのに、

 なおも未練たらたらの自分を想いを知らされ、己に幻滅してしまう。

(マムとダッドには悪いけど……、でも、もう6日も一緒に過ごしたもん……。もう “親不孝者” なんて、怒られる覚えないもん……)

 そう自分の正当性を己自身に主張したヴィヴィは、張り詰めていた糸が切れたように、ぽすりと後部座席の背凭れに身を投げ出す。

「………………」

 車窓から覗く刻々と変わる街並みに向けられる瞳は、心底疲れ果てて濁っていた。



 私は――。

 私は結婚もしないし、子供も持たない。

 いずれは、クリスも所帯を持つ。

 そうしたら迷惑がられない程度に、甥か姪を愛させて貰おう。

 独りじゃない。

 素敵な友人も沢山いる。

 大学を出たら、プロスケーターになって、

 外交官……は、もう無理でも、

 何らかの形で国際貢献にも従事して。

 そう、振付師になるのもいいかもしれない。

 コーチ……。

 今は考えられないけれど、そういう選択肢もある。

 でも、そうか――。

 そうすれば、世界中の若い子供達を育てられる。

 小さな子から大きな子まで、

 愛情を注いで一流の選手へと育て上げる。

 それは下手をしたら、その子の両親以上の深い関わりを持って、

 長い時間その子の成長を見守る、やりがいのある仕事。

 果たしてそれは、

 “子育てと同じ” じゃないだろうか?



 とても良い。

 とっても良い。

 そういう素敵な未来が、

 自分にもまだ、残っているのかも知れない――





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