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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第15章     

「えぇ――っ!? ヴィヴィはぁ~~?」

「行ぐわげあるがぁ~~っ!!!」

飛んで火にいる夏の虫になると、何度言えば分るんだ。

腹の底から(なまはげも真っ青の)オドロオドロシイ声を振り絞り拒否したヴィヴィを、フィリップが真似る。

「俺も「行ぐわげあるがぁ~~」って言っちゃ駄目?」

「駄目に決まってるじゃありませんかっ 貴方はもてなす側の人間ですよ!」

問答無用とタキシードの首根っこを掴んで引きずられていく王子に、周りの皆は爆笑した。

「あははっ ガキの頃から変わんねーなー、坊は」

「そうなんですか?」

「そうよ、ここは坊にとっては庭みたいなもんだからな」

「しょっちゅう宮殿を抜け出しては、近所の悪ガキどもとつるんで買い食いしてたわ」

「で、従者に見つかって鬼ごっごした結果、ああやって連れ戻されるっていう」

遠ざかっていく二人を見れば、諦めたらしいフィリップが広い肩を落とす様子がまるで幼子の様だった。

思わず吹き出したヴィヴィと、その様子を地図の陰からちらりと確認し、また視線を戻すクリス。

一度笑ってしまえば周りの陽気な面々につられ、なんか止まらなくなった。

「けどさ~~私、なにも聞かされてなかったから「フィルが男の子に求婚してる! ついに男女見境なくなったか!?」って一瞬引いたわ~~」

その花屋のお姉さんの言葉に「俺も俺も」と皆が賛同する。

「実は、ウィッグ、結構暑いですww」と苦笑してみせたヴィヴィに、

「おう、じゃあキンキンに冷えたシャンパン呑んどけ!」と近所の酒屋の親父が持って来てくれて、更に周りが笑いに包まれる。

「じゃあ、お言葉に甘えて!」と破顔したヴィヴィ。

「フラッシュ・モブ成功、かんぱーい!」

「プロポーズ失敗、ざんねーん!」

「てか、そりゃ断られるだろうww Santé (乾杯)!」

踊り狂っていた面々も次々と、面白がって祝杯を挙げていた。

こんなにあけっぴろげに笑えたのなんて、いつ振りだろうか。

この地にいるとなんだか、フィリップのあっけらかんとした人柄に影響されてしまうような。

幾重にも纏っていた重い何かを、強引に剥ぎ取って脱ぎ捨てさせられている気さえする。

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