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あたかも普通の恋愛小説
第2章 不名誉な肩書き
彼が私たちに見えるようにスマホをかざした。ナンパ男が無理矢理私を引っ張っていく様子が写ってる。私の顔はよくわからないけど逃げ腰で、ナンパ男の顔はハッキリ写ってるから誰がどう見ても無理矢理って見えるはず。
「これ」
「っな、撮ってんじゃねえよ!」
私たちに声をかける前に撮影してたんだ。びっくり。
「警察に届けてもあんまり相手にされないかもしれないけど、ネットに流せば噂に尾ひれはつくかもね」
「ふざけんな!」
そんなことしたら逆に彼が訴えられかねないのに、自分のほうが悪いって自覚があるからかナンパ男はうろたえていた。
「彼女の手を離して。そしたら俺もこの画像はいらないから」
静かな物腰で、でも最後まで譲らない彼がとても男らしく見えた。ナンパ男が去ったあと画像を消去してる彼に私はおずおずと声をかけた。
「あああ、あのっ。ありがとうございます、……私、波島小鳥っていいます」
お礼にいつか食事でもと誘いたいのだけど、うまく言葉が出てこない。
「気にしないで。たまたま目についただけだから。じゃ」
見た目草食男子はほんとに草食男子なのか、そのままあっさり立ち去ってしまった。
(……名前も聞けなかった)
もしかするとああいうひとを好きになればいいのかもしれない。ああいうひとなら大事にしてくれるかもしれない。