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あたかも普通の恋愛小説
第13章 雨と仔猫と段ボール
でも何日か経ったある日。しばらく忙しいからと言っていたはずの郎太から突然電話があって。その日は郎太に会える予定もなかったから私の部屋にいたんだけど、雨の降る中郎太が押し掛けてきた。
「郎太、ずぶ濡れ!一体どうしたの?」
私はタオルで郎太の頭をわしゃわしゃ拭きながら心配して見上げたけれど、郎太は何も言わず黙り込んだままだった。
こんなふうに突然来たりするのもはじめてだし、だいたい今日は大学で何か大事な用事があったはずだし、雨なのに傘もささないなんて。
「なにかあったの…?」
泣きそうになる。
何かがあったのは間違いないのに郎太は何も答えてくれなくて、私には何が出来るかわからない。
雨に濡れた郎太を拭いてあげるくらいしか出来ない。そんなの、郎太がほんとに必要としてることとは関係ないだろうけど。